13人目の怒れる男

本や映画の感想など。携帯依存症だけど何とか読書量を増やしたい日々。

ロリータ(1962年)

キューブリック作品がいくつか好きなのと、タイトルに惹かれて観てしまった。

結論から言うと、観なくてもよかった。ロリータを連れ回して抑圧しようとする主人公の行動は、もはやロリコンという単なる性的嗜好に収まらず、前時代的・中世的な匂いがして観ていて不快だった。そもそも性的嗜好以前に、人を騙したうえで傷つけ死に追いやったことに何の罪悪感も表現されていなかったことに戸惑った(本筋ではないのだろうが)。全体的に、ロリータに限らず人の扱いが軽くて、観ていて不快感と嫌悪感を覚える映画だった。

他のブログ記事を調べると、原作となった小説は実際の事件に基づいているとも言われているし、キューブリックは男の偏愛を茶化す意図があったとも言われている(いずれも確証はないので真意は分からない)。もしキューブリックにその意図があったとしたら、本作はある意味コメディ的な映画として観るべきで、自分が考えすぎているだけなのかもしれない。

評決のとき

<ネタバレあり>
復讐による殺人は許されるのか、司法制度はどう裁くのかというのが主題だか、安定や安全を捨てて自分の正義をどこまで貫けるのかというのもまたテーマである。現実では正義を貫ける人などいないので、だからこそ自分を貫く主人公に惹かれ、憧れてしまう。
それだけに、殺人犯なのに無罪判決という結末や、それに至る主人公による感情論の展開は腑に落ちなくて残念ではあるが、そこに至るまでの展開はかなりおもしろい映画だった。

大人の方が刺さるかもしれない、トイストーリー4

シリーズ4作目でそろそろ飽きてくる頃だが、テンポ良く短い時間で仕上げているのは好印象。

作中でキャラクターが自分の内なる声に従うシーンが度々出てくるが(決定的なのはラストシーン)、自分の幸せは自分で見つけるしかないんだよ、自分の本心に従えというメッセージ性を感じた。特にラストシーンは意外な決断だと思ったし、人生に迷っている大人の方が観ていて刺さる作品ではないかと思う。

男の夢が詰まった映画、ウルフ・オブ・ウォール・ストリート

金、女、豪遊、地位と名誉、男の夢がこれでもかと詰められた映画(無論ドラッグは例外)。誰もが本能に忠実、頭のブッとび具合が観ていて爽快で、押さえつけていた本能が呼び覚まされる感覚。案外こういう単純でストレートな映画の方が魂を揺さぶったりするし、ゴッドファーザーを観た時となんとなく似ている。アル中かつヤク中の主人公を演じたレオナルド・ディカプリオのブッとんだ演技が素晴らしく、彼でなければまた違った映画になっていたかもしれない。

ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

※ネタバレあり

おそらくだけど作り手は純粋なサスペンス映画を作りたかったんだと思う。そういう視点で観れば、それはそれで面白かった。

ただし突っ込みどころも多い。死刑制度の撤廃を熱心に訴えるわりに自分の命(あるいは仲間の命)はずいぶん軽々と捨てている。ラストシーンにしても、そのまま終わってくれれば良いものの、あんな茶番劇に付き合わされていたのかと思うと正直がっかりした。

純粋な娯楽としてのサスペンス映画だから、そういう所に突っ込むのはあまり意味がないと分かっている。これは死刑制度というテーマを扱っているように見せかけた、ただの娯楽映画。個人的にはあまり好きなタイプの映画ではない。

実写版アラジンは、キャリアウーマンと男の友情の話になっていた

かなり個人的な偏見だけど、昔からディズニーと言えばヒロインのお姫様が困難を乗り越えながらも王子様とハッピーエンドを迎えるファンタジーという印象が強くて(白雪姫やシンデレラくらいしか知らなかった)、あんなのは女子が観るもんだと勝手に決めつけていた。ただその中でもアラジンはファンタジーとロマンスだけではなく、ジーニーというぶっ飛んだ奴のおかげでコメディ色が強くて、ディズニー王道の西洋ではなくアラブ世界の異国情緒があふれていて、主題歌も素晴らしかったので、ディズニーの長編アニメの中では結構お気に入りだった。

そんなアラジンがいつのまにか実写化されていて、ちょうど機会もあったので観に行くことに。アニメの実写版という時点で特に期待はしてなかったけど、アラジンなんだから少なくともシンデレラの実写版よりは楽しめるだろうという個人的な確信もあった。

さて、本編。観ながらずっと思っていたのは、まずジャスミンのキャラが全然違うじゃんかと。ジャスミンといえば色っぽくて、気品もありながら男を誘う危なげな魅力もある大人のお姉さんというイメージだったんだけど、全然違う。本作では、事あるごとに女は引っ込んでろと見下すジャファーに対し、私こそ国王にふさわしい、私だってできるんだという、アニメにはなかった(と思う)勝気で芯の強い性格になっている。映画自体も女性の自立と地位の向上というテーマにだいぶクローズアップしていて、クライマックスはジャファーが寝返った直後のジャスミンの挿入歌。個人的にミュージカルはあまり好きではないけど、ジャスミンを演じるナオミ・スコットの歌唱力と表現力が素晴らしくて、あのシーンはかなりグッとくるものがあった。ジャスミンの初登場シーンでは、あれ、この子がジャスミン?だいぶイメージと違うな…と思ったものの、美しくもあり意志の強さが顔に現れてもあり、このキャラクターにはどハマりしていたと思う。ナオミ・スコット、素晴らしいです。単純にかわいいし、この子の存在を知れただけでもこの映画を見た価値があった。テーマ自体は今さらというか、かなり使い古された感があったけど(ジャファーのキャラクターがステレオタイプすぎて、おいおいこれを観てる女性はどんな気持ちなの?と思わずにはいられなかった)。

それからジーニーのキャラクターも少し違うか。全体的に、アラジンに同情的というか、肩入れしすぎている感があった(アニメ版をあまり覚えていないだけかもしれない)。特にラストシーンはアニメ版と違って意外にも感動的な仕上がりになっていて、「やったー、自由だ!イェーイ!」と言いながらいつもの調子で去っていくあのジーニーが個人的には観たかった。全体的に、期待していたよりもコメディ色は薄かったように思う。

もちろんアニメ版に忠実なところも多くて、特にオープニングをはじめ実写ならではの迫力も楽しめた。テーマに目新しさはないけど、今大衆向けにアラジンを作るとこういう映画に仕上がるんだなという、ある意味時代を感じられる映画だった。

日本映画の傑作と名高い黒澤明「七人の侍」を観てみた

正月なので古典映画でも観るかということで、前から気になっていた黒澤明監督の「七人の侍」を鑑賞。かなり昔に初めて観た黒澤作品「羅生門」はサスペンスのようなストーリーや演出が印象に残っており、「隠し砦の三悪人」はエンターテイメントとして完成度が高いなと感じた。七人の侍」は冒険ものではなくアクション主体の時代劇であり、黒澤本人は西部劇を撮りたかったとのことらしい。

まず武士が百姓を守るという構図があり、武士は武士、百姓は百姓と完全に分断されている。かつての日本社会が、単なる職業ではなく生まれからくる身分の違いにそれほど囚われていたということだろう。三船敏郎演じる菊千代の激昂や最後の勝四郎と志乃のすれ違いにもそれが表されている。

俳優の演技も迫力がある。特に三船敏郎演じる菊千代のキャラクターはめちゃくちゃ強烈で、最初はただ豪快でふざけてばかりの奴のように見えるが、実は百姓生まれで、幼い頃に母親を亡くし、百姓を理解し同情的な立場でもある。その幅を演じた三船はさすがというか、そもそも三船のために作られた役らしい。また久蔵、菊千代が討ち取られた後の勝四郎の嘆きも胸に来るところがある。敵襲や決戦へ備える緊張感の演出もうまい。

全体的に、虐げられながらもしぶとく生き抜く百姓の強さと、戦に身を捧げある意味刹那的に生きる武士の切なさが対比されている。その中で展開される野武士との戦。説教じみてもなく人情臭くもない、純粋な時代劇として楽しめる作品だと思う。