13人目の怒れる男

主に本や映画の感想など。語る人がいないのでブログに書いています。

ウォール街の狼が明かすヤバすぎる成功法則

知人が読んでいておもしそうだったので、営業の参考にと思って読んでみた。

結論としてはかなり為になる内容だった。著者はセールスで成り上がってきたセールス営業至上主義で、営業としてのし上がるための心構えから具体的な営業手法について説明されている。特にセールス営業に関わる人なら一度読んでみると気づきが多いと思う。

高橋是清自伝(上)

この人のことはほとんど知らなかったが日露戦争時に財政面で活躍した、経済政策で手腕を発揮したとどこかで読んで個人的に気になっていた。明治の松方正義、昭和の高橋是清と言われるぐらいだから凄い人に違いないと思い手に取った一冊。

読んでみて思ったのはまず人との繋がりがものすごく濃いなということ。交友関係がかなり広くて、人生やキャリアの転機が何度もあったようだがほとんど人間関係からもたらされているように感じた。時代の違いなのかこの人の人望なのか、ろくに話せる友人さえいない自分とは人としての器が話にならないくらい違う。

また筋の通った性格で、間違いだと思ったことは上司相手だろうがはっきり言えることもすごいなと。自身の利益や保身だけでなく、国のためとか自分の信念のためとか大義や志を持つからこそできるんだろうか。10代で一人で渡米して生活してるのも強い。

意外に思ったのは20〜30代で職を転々としていて定職についていないこと。キャリアよりも自分に嘘をつかない、誇れる生き方を選んでいるようにも見受けられた。時代が違うのでキャリアという面では参加にならないが、大成する人はやはり志の高さや目線の高さ、人としての器の大きさが違うなということを思い知りました。

クレイジー・リッチ!

付き合った彼の実家が大富豪で、周りには妬まれるし彼の家族からも良く思われないしどうしよう…という話。彼氏の母親に気に入られようとしたりパリピ女達がウェーイしたり本筋はまったくどうでもよいが、主人公二人と良識ある何人かの友人の奮闘だけが唯一の救いだった。それだけに最後の結末にはガッカリで、おいおい、筋を通すんじゃなかったのかよと突っ込みたい。王道といえば王道だけど、庶民からすればどうでもよくてしょうもない上流階級の映画。

ただ主人公ニックと親友との友情にはグッときたし、男の友情っていいなあ、俺もああいう親友が欲しい…と寂しい気持ちになったよ。恋愛映画なんだけど主人公二人はそれぞれ親友の友情に支えられていて、むしろ友人の大切さが際立つ映画だった。一つ忠告するなら、20代後半くらいの結婚するかしないか微妙な年齢のカップルが見ると気まずくなるからやめた方がいいぞ。

ペスト大流行

人類史上でも類を見ないペストというパンデミックはなぜ起こったのか、歴史にどのような影響を与えたのか、純粋な好奇心からこの本を手に取った。
知らなかったが意外にもペストは歴史的に何度も流行していて直近だと19世紀に世界的に流行ったということだった。
その中で特に14世紀になぜ大流行したのかという点については、ペスト菌を運ぶネズミの大移動や、自然環境の悪化や飢餓による抵抗力の低下などの間接的な要因が複合的に重なったと書かれているが、明確な答えがないようだった。
また14世紀のペストが歴史に与えた影響も、それ自体が決定的に何かを変えたというよりも、時代の流れを決定づけた、変化を後押しした、というものだった。特におもしろいのはペストによって鏡のようにその時代が映し出されたという考えで、中世世界の14世紀の陰鬱さ・混迷具合に比べれば科学的・知的に進歩した17世紀は前向きですらあった(自信とも傲慢とも言える)というもの。
ペストは歴史上の役割を終えてしまったと書かれているが、ペストではない別の病気、あるいは大きな危機が将来人類を襲った時、どうなるかは想像もつかないが、あとから振り返れば、それがその時代を映し出す鏡になるのかもしれない。

昭和史 戦後編

個人的には戦後の軽軍備・経済重視のおかげで今の平和と豊かさを享受できているので戦後の日本の方向性はそこまで間違っていなかったと思う。ただし筆者の見解と同じくバブル崩壊を転機に今後も衰退の一途を辿るのは確実で、危機感を持って少しでも経済的競争力・国際的プレゼンスを高め、結果として平和と豊かさを維持することが一つの方向性かと思うし、再軍備も理論的には一つの選択肢かと思う。中国・韓国蔑視や日本万歳なテレビ番組など過去の栄光を引きずっている感はまだまだあり、この辺りの認識を改めて(偏見なく外に目を向けて)いかに危機感を持てるかが鍵だと思う。

また昨今言われる政治への無関心については、大きな外的脅威もなく経済的に余裕ができ政治に期待するものがなくなってきたからではないか(誰がトップになりどんな国を目指してもある程度の生活水準が担保されている)。生活が安定していれば大きな変化を望まないので自民党政権がほぼ安定的に続いてきた。最近で言えば行政文書の書き換えや事務次官のセクハラが話題になる位で、将来貧困の深刻化や移民解放、外的脅威といった大きな要素が出てくれば政治闘争もまた激しくなるのではないかと思う。

お金2.0

簡単にまとめると、将来的に技術の発展により働かなくても十分に生きていける社会が実現し、資本主義の支配が薄まり社会経済システムそのものが根本から変わっていくのではないかという話。

ただし個人的には筆者はテクノロジーによる発展を過信しすぎているのではないかと思う。まだテクノロジーやセーフティネットによって労働が不要になるほど豊かな社会が実現される気配はなく、相変わらず働くことやいくら稼ぐかといった資本主義的な考えは長い間重要であり続けると思う。内面的価値や社会的価値の話も同様で、そうした価値に基づくシステムも確かに大きくなっているかもしれないがそれだけで食べていけるとは思えず、資本主義システムはまだ優勢だろう。

日本が少子高齢化でジリ貧に向かい、おそらくこれからますます貧困化していくことを考えると、テクノロジーによる不労社会の実現とそれによる社会経済システムの変化というのは少し空想がすぎるというのが今時点での率直な感想。ただし自分の認識が甘いだけで筆者にはまた違う景色が見えているのかもしれず、自分では全く持ち得ない視点や考え方に触れられた点では良かった。

サピエンス全史

人類の進化のキーポイントとして認知革命、農業革命、科学革命があったとし、宗教も国家も資本主義や自由主義のようなイデオロギーも人類が集団を大きくするために頭の中で作り出した虚構に過ぎないと言い切る。この辺の主張は無神教の自分には特に抵抗なく腑に落ちたけど、一神教徒には相当受け入れ難いんじゃないだろうか。とは言え、いくら稼げるかとか、どれだけ可愛い異性と出会えるかとか、自分が今夢中になっていることすらも資本主義や恋愛における自由といったその時代や地域の支配的な思想の影響下にあるので、一神教徒を馬鹿にできる立場ではないと気づく。本来は金を稼ぐことにも自分の夢を追うことにも、もっと言えば人生そのものにも意味はないのに、勝手にあれこれ考え出して何者かになったり何かを成し遂げないといけないかのように苦悩しながら生きている人類は、大して考えもせず生きているその他大勢の生物よりある意味では不幸な存在かもしれない。

科学がもたらした現代の繁栄と平和を筆者は過大評価し過ぎているような気もするが、人類の未来の行方についてはおもしろいことを書いている。人類が神の如く生命に手を加えることになるかもしれないし、人工知能や人類を超越した全く別の生物が人類に取って代わる可能性もある。この辺りの進化の行方は幼年期の終わり2001年宇宙の旅でも語られたテーマだが、どんな形であれ特異点を迎えるという未来は十分あり得るんじゃないかと思う。