13人目の怒れる男

主に本や映画の感想など。語る人がいないのでブログに書いています。

サピエンス全史

人類の進化のキーポイントとして認知革命、農業革命、科学革命があったとし、宗教も国家も資本主義や自由主義のようなイデオロギーも人類が集団を大きくするために頭の中で作り出した虚構に過ぎないと言い切る。この辺の主張は無神教の自分には特に抵抗なく腑に落ちたけど、一神教徒には相当受け入れ難いんじゃないだろうか。とは言え、いくら稼げるかとか、どれだけ可愛い異性と出会えるかとか、自分が今夢中になっていることすらも資本主義や恋愛における自由といったその時代や地域の支配的な思想の影響下にあるので、一神教徒を馬鹿にできる立場ではないと気づく。本来は金を稼ぐことにも自分の夢を追うことにも、もっと言えば人生そのものにも意味はないのに、勝手にあれこれ考え出して何者かになったり何かを成し遂げないといけないかのように苦悩しながら生きている人類は、大して考えもせず生きているその他大勢の生物よりある意味では不幸な存在かもしれない。

科学がもたらした現代の繁栄と平和を筆者は過大評価し過ぎているような気もするが、人類の未来の行方についてはおもしろいことを書いている。人類が神の如く生命に手を加えることになるかもしれないし、人工知能や人類を超越した全く別の生物が人類に取って代わる可能性もある。この辺りの進化の行方は幼年期の終わり2001年宇宙の旅でも語られたテーマだが、どんな形であれ特異点を迎えるという未来は十分あり得るんじゃないかと思う。