13人目の怒れる男

主に本や映画の感想など。語る人がいないのでブログに書いています。

ペスト大流行

人類史上でも類を見ないペストというパンデミックはなぜ起こったのか、歴史にどのような影響を与えたのか、純粋な好奇心からこの本を手に取った。
知らなかったが意外にもペストは歴史的に何度も流行していて直近だと19世紀に世界的に流行ったということだった。
その中で特に14世紀になぜ大流行したのかという点については、ペスト菌を運ぶネズミの大移動や、自然環境の悪化や飢餓による抵抗力の低下などの間接的な要因が複合的に重なったと書かれているが、明確な答えがないようだった。
また14世紀のペストが歴史に与えた影響も、それ自体が決定的に何かを変えたというよりも、時代の流れを決定づけた、変化を後押しした、というものだった。特におもしろいのはペストによって鏡のようにその時代が映し出されたという考えで、中世世界の14世紀の陰鬱さ・混迷具合に比べれば科学的・知的に進歩した17世紀は前向きですらあった(自信とも傲慢とも言える)というもの。
ペストは歴史上の役割を終えてしまったと書かれているが、ペストではない別の病気、あるいは大きな危機が将来人類を襲った時、どうなるかは想像もつかないが、あとから振り返れば、それがその時代を映し出す鏡になるのかもしれない。