13人目の怒れる男

主に本や映画の感想など。語る人がいないのでブログに書いています。

日本映画の傑作と名高い黒澤明「七人の侍」を観てみた

正月なので古典映画でも観るかということで、前から気になっていた黒澤明監督の「七人の侍」を鑑賞。かなり昔に初めて観た黒澤作品「羅生門」はサスペンスのようなストーリーや演出が印象に残っており、「隠し砦の三悪人」はエンターテイメントとして完成度が高いなと感じた。七人の侍」は冒険ものではなくアクション主体の時代劇であり、黒澤本人は西部劇を撮りたかったとのことらしい。

まず武士が百姓を守るという構図があり、武士は武士、百姓は百姓と完全に分断されている。かつての日本社会が、単なる職業ではなく生まれからくる身分の違いにそれほど囚われていたということだろう。三船敏郎演じる菊千代の激昂や最後の勝四郎と志乃のすれ違いにもそれが表されている。

俳優の演技も迫力がある。特に三船敏郎演じる菊千代のキャラクターはめちゃくちゃ強烈で、最初はただ豪快でふざけてばかりの奴のように見えるが、実は百姓生まれで、幼い頃に母親を亡くし、百姓を理解し同情的な立場でもある。その幅を演じた三船はさすがというか、そもそも三船のために作られた役らしい。また久蔵、菊千代が討ち取られた後の勝四郎の嘆きも胸に来るところがある。敵襲や決戦へ備える緊張感の演出もうまい。

全体的に、虐げられながらもしぶとく生き抜く百姓の強さと、戦に身を捧げある意味刹那的に生きる武士の切なさが対比されている。その中で展開される野武士との戦。説教じみてもなく人情臭くもない、純粋な時代劇として楽しめる作品だと思う。