13人目の怒れる男

主に本や映画の感想など。語る人がいないのでブログに書いています。

実写版アラジンは、キャリアウーマンと男の友情の話になっていた

かなり個人的な偏見だけど、昔からディズニーと言えばヒロインのお姫様が困難を乗り越えながらも王子様とハッピーエンドを迎えるファンタジーという印象が強くて(白雪姫やシンデレラくらいしか知らなかった)、あんなのは女子が観るもんだと勝手に決めつけていた。ただその中でもアラジンはファンタジーとロマンスだけではなく、ジーニーというぶっ飛んだ奴のおかげでコメディ色が強くて、ディズニー王道の西洋ではなくアラブ世界の異国情緒があふれていて、主題歌も素晴らしかったので、ディズニーの長編アニメの中では結構お気に入りだった。

そんなアラジンがいつのまにか実写化されていて、ちょうど機会もあったので観に行くことに。アニメの実写版という時点で特に期待はしてなかったけど、アラジンなんだから少なくともシンデレラの実写版よりは楽しめるだろうという個人的な確信もあった。

さて、本編。観ながらずっと思っていたのは、まずジャスミンのキャラが全然違うじゃんかと。ジャスミンといえば色っぽくて、気品もありながら男を誘う危なげな魅力もある大人のお姉さんというイメージだったんだけど、全然違う。本作では、事あるごとに女は引っ込んでろと見下すジャファーに対し、私こそ国王にふさわしい、私だってできるんだという、アニメにはなかった(と思う)勝気で芯の強い性格になっている。映画自体も女性の自立と地位の向上というテーマにだいぶクローズアップしていて、クライマックスはジャファーが寝返った直後のジャスミンの挿入歌。個人的にミュージカルはあまり好きではないけど、ジャスミンを演じるナオミ・スコットの歌唱力と表現力が素晴らしくて、あのシーンはかなりグッとくるものがあった。ジャスミンの初登場シーンでは、あれ、この子がジャスミン?だいぶイメージと違うな…と思ったものの、美しくもあり意志の強さが顔に現れてもあり、このキャラクターにはどハマりしていたと思う。ナオミ・スコット、素晴らしいです。単純にかわいいし、この子の存在を知れただけでもこの映画を見た価値があった。テーマ自体は今さらというか、かなり使い古された感があったけど(ジャファーのキャラクターがステレオタイプすぎて、おいおいこれを観てる女性はどんな気持ちなの?と思わずにはいられなかった)。

それからジーニーのキャラクターも少し違うか。全体的に、アラジンに同情的というか、肩入れしすぎている感があった(アニメ版をあまり覚えていないだけかもしれない)。特にラストシーンはアニメ版と違って意外にも感動的な仕上がりになっていて、「やったー、自由だ!イェーイ!」と言いながらいつもの調子で去っていくあのジーニーが個人的には観たかった。全体的に、期待していたよりもコメディ色は薄かったように思う。

もちろんアニメ版に忠実なところも多くて、特にオープニングをはじめ実写ならではの迫力も楽しめた。テーマに目新しさはないけど、今大衆向けにアラジンを作るとこういう映画に仕上がるんだなという、ある意味時代を感じられる映画だった。