13人目の怒れる男

主に本や映画の感想など。語る人がいないのでブログに書いています。

コロナが歴史に果たす役割とは何か(書評「ペスト大流行 ヨーロッパ中世の崩壊」)

以前に興味があって読んだのだが、ここ最近の新型コロナの流行もあり、今読んだら面白そうだと思い改めて読み返してみた。


人的被害の面では新型コロナの比ではなかった14世紀のペスト大流行(著者推計で全世界の死者7,500万人)は当時の世界をどう変えたのか?新型コロナは世界をどう変えうるのか?

その点で示唆に富む内容があったので、以下に引用してみる。


「多くの史家の指摘するとおり、黒死病そのものは、時代の担っていた趨勢のなかから、次代へ繋がるものをアンダーラインした上でそれを加速させ、その時代に取り残されるものに引導を渡すという働きをしたにせよ、次代を造り出す何ものかを積極的に生み出したわけではなかった。


たしかに黒死病は、流行病としては人類の歴史上、おそらく最悪のものの一つであった。しかし、その異常事態の上に映し出されたものは、良かれ悪しかれその時代そのものであって、その時代の要素が、いささか拡大されて見えるにとどまる。逆に見れば、あれほど未曾有の異常な時間も、歴史のなかに呑み込まれてしまえば、一つのエピソードにすぎないのである。」


つまり、コロナそれ自体も何か新しいものを生み出すわけではないが、次世代に繋がるものと淘汰されるものとの取捨選択を早め、次の時代への移行を促す役割を果たすかもしれない。

現に、国家レベルでは自国第一主義や反国際協調、社会経済的にはEコマースやテレワーク、各種手続きの電子化、オンラインでの娯楽サービスなどが、今後より促進されていくのではないかと考えられ始めている。

(一方で、人との触れ合いを求めることは人間である以上避けられず、対面でのコミュニケーション、特にその究極である性産業などは、よりその価値が認識されていくのではないかと個人的に思っている。)


取捨選択の結果が分かるのはもう少し先になるだろうが、一個人としては、時代の流れに取り残されないようにアンテナを張りながら、目の前の情報に踊らされず、日々できることを地道にやって信頼と実績を積み残していきたいと思うのみ。