13人目の怒れる男

主に本や映画の感想など。語る人がいないのでブログに書いています。

シン・ゴジラ

おもしろかった。久々におもしろい邦画を見た気がする。

まずテンポが良いね。家族だの何だのごちゃごちゃ言う奴もなくただ危機に対応するために物語が進むから、見ていて気持ちがいいし清々しい。内閣やら何やらの対応も直接取材したとのことでリアリティがあるし、普段テレビで表しか見ない政府の内実はこんな感じなのねと感心。もっとはよ決断せんかい!というもどかしく感じながらも、各方面の合意形成に時間がかかって現場の人は大変そうだなあという印象。

国際社会の動きもやたらリアリティがあって、確かにそうなりそうだよなあと納得しちゃうし、東京に核が落とされそうになるところはなかなか心動かされる。臨時総理大臣は地味にいい味だしてるね。細かいところだと、一つだけアニメ番組がついてるテレビなんかも妙にリアリティだし、在来線が一斉に突っ込むところはかわいいなおい!と思わず笑いそうになる。ゴジラはキモいうえに強すぎて嫌悪と恐怖の対象。東京がぶっ壊されるシーンはもうこれ以上やめてくれと見ていられないほどショッキングで、こんなに恐ろしい映画だとは思わなかった。

最後はちょっと理想主義的な主人公とオタク集団がお手柄をあげるが、個人的にはリアリストな主人公の上司が好きだね。計算高いし頭もいいし、彼みたいな人間が組織には必要だ。あとは石原さとみがとにかく色っぽくてかわいい。いかにもエリートですって感じで自信満々で私って優秀でしょ?的な振る舞いがたまらんな。

とにかく、ごちゃごちゃ言ってんじゃねえぞオラ!と言いたくなるチンタラしたぬるい邦画への不満を晴らしてくれる良い映画だった。ゴッドファーザー見たときも思ったけど、もっとこういう、ズバッと思い切りよくやってくれる映画が増えると良いね。

ゴッドファーザー

おもしろい。当たり前だが力ある者が権力が持つし、権力の裏には力がある。パワーバランスが変われば抗争が起き、血で血を洗うのは、マフィアだけの話でなく人間社会の縮図。暴力も争いもない現代で、根本にある人間としての、動物としての性を思い出させられた。

アル・パチーノ、後半はめちゃくちゃハマってたなあ。若いのに貫禄ありすぎる。

『「美学」さえあれば、人は強くなれる』

ケンコバは仕事においてしたたかな面もあれば、恋愛では意外と不器用な面もあるようだ。ただ、自分はこう生きる!という芯が伝わってきて素直に格好いいなと思った。

一番響いたのは、他人にどう思われるかを気にするより自分がどう動くかが大切だという点。つまり、自分なりの美学を持って日々を生きろということだろう。

ケンコバは美学を軽んじる人を快く思わないような面もあるけど、自分の欲望のためになりふり構わず生きるのも(度はあるが)決して切り捨てられないなとも思う。

恋愛や結婚に関して言えば、モテることを目指さない限りは必ずしも器用になる必要はないのかなと経験上思う。自分と気の会う人に出会った時に、もっと可愛い子がいるはずだとか理想と違うとか、そういう自分のプライドをどれだけ捨てられるかだと思う。

あとは家庭環境が人に与える影響は大きいのだなと改めて感じた。自分もやっぱり父親と似てるなと思うし、同じような家庭をつくることを気がついたら考えている。祖先が辿った同じような人生を繰り返していく。それは自然なことだし、人間それでいいんじゃないのと最近は思うようになった。

深遠な世界観で描くSFミステリー 「鋼鉄都市」

「鋼鉄都市」(アイザック・アシモフ 1953) 

SFの古典を一通り読み漁ろうと思って手にした最初の作品。

宇宙人の高度な技術により閉鎖的で無機質な文明社会が確立し、ロボットと人間が共存する未来の世界。作り込まれたSFの世界を舞台にしたミステリーだ。SF、刑事といえば何となくブレードランナーを思い出す。

とある殺人事件が起きるが、唯一現場にいた容疑者は、宇宙人の高度な分析により殺人を犯す精神構造でないと分かる。一方で、三原則があるためロボットを使って人を殺すこともできない。じゃあ一体誰が犯人なのか?

なるほど、三原則の穴を突いたとはそういうことねと思わせる結末。ただ正直ミステリーとしてはそこまでスリルもなく、あくまでSF小説である。次は作者の短編小説を読んでみたい。

ところで、監視カメラがあれば一発解決なのになと思ったが、調べてみると監視カメラは1960年代の工業用カメラから発展したようだ。当時はそんな概念もなかったのだろう。人間の想像力といえどもその時代の影響下にあるんだなーと感じた瞬間だった。